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2021/10 倉敷へ、鳥取へ(20)吉ヶ原の保存車たち <後編> [保存車・博物館・廃線跡]

正月の“出撃ラッシュ”でだいぶ間隔が空いてしまったこのシリーズ。
前記事は何と12月27日(→ こちら
10月19日に羽田から出発、水島臨海鉄道の貨物列車を中心に20日まで撮影し、3日目。朝のキハで津山まで移動し、路線バスで吉ヶ原へ。1991年に廃止となった同和鉱業片上鉄道線の吉ヶ原駅を訪問した話題。

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【2021年10月21日13時27分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

いまから60年ほど前には昼夜を問わず、硫化鉄鉱を産出し、それらは貨車に積まれて瀬戸内海に面した片上まで輸送されたという。特に硫黄は農業用肥料の他、さまざまな工業原料として重宝され。
それとともに昭和の後半にかかる頃まで、県下有数の大きな街があった...というのだから。でも、吉ヶ原...柵原鉱山はその後、急速に衰退していく。石油精製で得られる安価な硫黄が供給され、また、硫化鉄鉱自体も円高で海外から安く輸入されるようになると、<変態鉄>が生まれた頃からは需要は減って。
鉱山の操業停止のあとをおって、1991年は片上鉄道も廃線となる。

その鉱石を満載した貨物列車の先頭に立って走り続けたのがDD13形ディーゼル機関車。国鉄のものと見た目はよく似ていても、こちらは自社発注車。
DD13の活躍には、自分はちょっと間に合わなかった世代。後継のDE10形も風前の灯火となって...、でも、こちらは大事に保存され、展示運転の際には不定期に客車を牽いて走ることも。茶色い国鉄DD13の登場時のカラーに変更されていた同機だが、最近、再塗装されて。
展示運転はコロナ禍で長期休止中だが、その分、ほぼ誰も居ない黄福棚原駅で、美しい姿の機関車を撮ることができて、大満足だった。

……  ……

2021年10月21日(木)晴れ

これまでにも何度か、この吉ヶ原駅を訪れたことがあった。でも、それらは全て毎月最初の日曜日、展示運転が行われる日だった。展示運転に使われる車両は“日替わり”。自分が行くとキハが動いているばかりで。
もちろん、40000番台の旧車両番号規程の時に製造された黎明期の国鉄ディーゼル動車を体験できるのは非常に魅力的だが...

数百メートルの展示運転線を行ったり来たりしながらカメラを構えて悪戦苦闘しているうちに、すぐに時間が過ぎてしまうのである。

それに比べて...

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【2021年10月21日13時03分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

この日は、本当にノンビリ。路線バスのダイヤの関係で吉ヶ原に3時間半の滞在となったが、その間、たまに駅舎に戻ってベンチでくつろぎながら...
柵原鉱山の跡地は現在は廃棄物のリサイクル工場になっているほか、危険な箇所もあるとして立ち入り禁止になっており。その柵原駅の1つ手前、片上鉄道の運転上の要衝だった吉ヶ原駅とその車両基地の跡地が現在の「柵原ふれあい鉱山公園」になっているという。

駅の裏手は、たぶんかつては車両を留置してあったのだろうが、いまは芝生の広場になっており。

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【2021年10月21日13時04分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

江戸時代、この棚原で採掘された硫化鉄鉱は吉井川を高瀬舟で下ったそうだが、その復元模型が置かれていたり、あるいは、無造作に坑内用の小型機関車が...
「展示物です」という注意書きの紙が貼られているくらい...たぶん、<鉄>か、こういう鉱山についての知識がある人で無いと、咄嗟に坑内軌道用の機関車とは思わないかも。いつか、美しい姿を取り戻してくれたら...
これも貴重な保存者である。足回りは完全に隠れているかと思いきや、ブレーキシューだけ覗いている。パンタグラフは一般の鉄道車両と変わらないような立派なものなのがちょっと意外。

それにしても、貴重な坑内ナローの保存車...と言いつつ、軌間すら測らずに帰ってきた自分、<鉄>失格である。

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【2021年10月21日12時55分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

この芝生のスペースの後ろ側、つまり、線路を挟んで駅の斜め前方にあたる位置に鉱山資料館があって。そこにも片上鉄道で活躍した貨車が静態保存されているのは前記事でご紹介した通り。
でも、さらにそこには...

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【2021年10月21日12時56分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

たぶん、保存会が作業用(交換用)に確保しているモノだと思うのだが戦前製キハに見られた菱枠台車が置かれており。
キハ303号車などもこの台車を採用しており、そのあたりの補修用のものだろうか。

2個、つまり、1対が置かれており。ビニールシートを被せられていることからも予備品として確保されているものであることが推定される。

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【2021年10月21日13時00分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

この気動車用の菱枠台車自体、日本車輌が開発したものとされている。でも、この個体には製造銘板が残っており、製番は読み取れないが「昭和10年 川崎車輌」の文字を確認することができた。国鉄が発注したガソリン動車用のものだろうか、それが譲渡に伴い片上鉄道に入ってきた...と妄想は膨らむのである。

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【2021年10月21日13時00分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

昭和30年頃に車両軽量化の技術が確立するまで、とにかく、キハは簡素な構造が採用された。そう、エンジン出力が低い分、車両を極力軽量化することが求められたから。
この菱枠台車も、同時期の電車用や客車用に比べると台車枠も簡素なつくりに見えるし、台車そのものも小さめ。でも、聞くところでは、乗り心地は良かったのだとか。この後継のDT18台車が乗り心地の悪さで知られていたものなので、ついつい、もっと酷いのでは無いか...と想像してしまうが、地方私鉄の自社発注車ではキハ20系のDT22系台車が定着するまで、このタイプの台車を採用する例があったのだとか。

ちなみに、この鉱山資料館のすぐ先、駅の構内を出るところ、前記事のトップに載せたキハ312号車が整備を受けているスペースのところで線路はプツリと途切れている。

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【2021年10月21日12時58分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園付近

その先は線路跡がサイクリングロードとして活用されており。

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【2021年10月21日13時59分】 岡山県久米郡美咲町・柵原ふれあい鉱山公園

全長約34 kmのコースは、ほぼ廃線跡をトレースしており。途中には駅などの遺構も保存されているのだとか。膝の痛い<変態鉄>には絶対に無理だが...
いつか沿線も巡ってみたいと思う次第。(つづく)

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