南部縦貫鉄道「レールバス 夕暮れ撮影会」（１９＝最終回）七戸駅舎 [保存車・博物館・廃線跡]
旧街道筋で国鉄の幹線ルートから離れてしまった町の多くで、大正から昭和初期にかけて地元資本による鉄道敷設の機運が高まり...
もちろん、その中には今でも中小私鉄として続いているところもある。東京近郊なら流鉄もその１つだろう。あるいは、広い意味では小湊鐵道もそんな性格を持っていると考えられる。（安房小湊まで延伸する...というのは、“方便”だったと思われる部分があって。）
でも、そういうローカル私鉄、いま残っている方が僅か。大半は燃料事情が極度に悪化した戦後の混乱期に、そのピークを迎え、昭和30年代ともなると、その開業期の車両・施設の更新時期を迎え金銭的負担が見込まれたことと、道路整備による並行バス路線の発達で、廃止（バス転換）に追い込まれる路線が相次いでいた時期だった。
ちょうど、そんな時期...
1953年（昭和28年）に発足、さっそく敷設工事に取り掛かった南部縦貫鉄道だったが、すぐさま資金が払底し建設は何度も中断する。
しかし、その都度、再開に漕ぎ着けたのは地元の熱意のほか、「東北開発」という全額政府出資の特殊法人のおかげでもあった。沿線の天間林村の砂鉄鉱脈から採掘した砂鉄を貨物列車でむつ市に運んで製鉄に用いる計画。その輸送路として期待されたのが、南部縦貫鉄道だった。
【2023年10月8日14時35分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
当初から旅客輸送は“おまけ”程度に考えられていた節があり...
それが、当時、既に時代遅れの感があった機械式ディーゼルカー、しかもバス部品で製造した定員60名程度の小型車２両だけしか旅客車を用意しなかった部分にも現れていたと考えられるわけで。
リベットの目立つ丸っこい屋根肩のカーブ、当時のバスの部品を流用して作った、鉄道車両としてはかなり簡易な構造のものだった。この補修部品が払底したことも運行休止を決断する理由の１つだったとも言われている。でも、そのレールバス、そして、全国にもここしか残っていない国鉄キハ17系の最後の生き残り...
「貴重な」というだけでは済まないレベルの車両たちは、愛好会の皆さんをはじめとする関係者の努力によって、営業運転終了から四半世紀が過ぎても動態で残されており。僅かな時間ではあったが、この目で見て、そして、ほぼ思い通りの写真を撮ることができて...
資料性のあるものも含めて、駅舎内でグッズ類を購入して、少しばかりでも保存費用にご協力した次第。
18時すぎ、少し遅れて全てのイベントが終了、まもなく駅舎の扉も閉められる時間。タクシー会社に電話して、真っ暗の駅前広場で待っていた＜変態鉄＞だった。
…… ……
2023年10月8日（日）曇り一時晴れ
スタッフによる最後の挨拶。
【2023年10月8日18時32分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
やはり、こうした鉄道の動態保存には、単に撮りに来るだけの趣味者からは想像できないくらいの苦労があるようで。
「グッズ購入で保存費用に協力を...」と。
駅舎内ではきっぷ類や模型など、開業当初からのさまざまなグッズ類が販売され。
【2023年10月8日18時34分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
その傍ら、資料類が壁のところに展示されており。
北東北は冬場の豪雪や強風など、気象条件は厳しい路線だったと思われ。
無線などの情報伝達手段の発達で、最近では見かけなくなった気象告知板が壁面に並べられており。
【2023年10月8日18時38分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
そして、タブレット閉塞。いわゆる“お稲荷さん”である。
80年代の貨物輸送終了による合理化で全線１閉塞化されていたが、80年代までは天間林駅で列車交換が行われていたという。
その当時のものだろうか。
そういう展示資料は増えたものの、駅舎内は基本的に1997年5月の営業運転終了（休止ののち廃止）の時のまま残されているようで。
【2023年10月8日18時38分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
反対側の壁面には、「平成8年3月」とある時刻表が掲出されており。最末期には１日５往復、２両のレールバスのうち１両が七戸〜野辺地間を往復するだけになっており。その最終便にあたる第10列車が17:45発、その発車風景が「夕暮れ撮影会」で再現されたわけで。
【2023年10月8日18時39分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
驚きだったのは、隣の時計。グッズ販売をしていたおばちゃんによれば、営業運転時代から、ずっとこの場所で時を刻んでいるのだそうで。
十和田市方面への延伸が想定されており、七戸の中心街から離れた位置に設置された駅だったので、営業運転時代から、どちらかと言えば、閑散としていることが多かった...というが、地元の時計屋さんから寄贈されたものだろうか、いまも健在なのである。
【2023年10月8日18時39分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
さぁ、まだまだ駅舎内を見ていたかったが、そろそろ閉める時間だということで...
いつの間にか、外は完全に真っ暗で。真っ暗な駅前で待つこと10分あまり、タクシーが到着して。1,500円ほどで七戸十和田駅までは数分の距離だった。
80年代の国鉄合理化で貨物輸送がなくなっても、それでも合理化を重ねながら、南部縦貫鉄道が頑張った、その拠り所の１つが、東北新幹線の青森延伸時に（在来線から離れた）七戸に駅が設置される...ということだったという。その日を待ちながら、とうとう力尽きた...と。
尤も、盛岡以北の延伸は現在のフル規格新幹線になるまで紆余曲折、七戸を通るかどうかも二転三転、その新幹線計画にずっと翻弄されてきた...ということだったみたい。
【2023年10月8日18時57分】 東北新幹線・七戸十和田駅
がらんとした感じの七戸十和田駅。
いや、本当はここでのんびり写真を撮っていないで、全力で改札口に向かえば１本前の「はやぶさ」に乗れたみたいで...
【2023年10月8日19時47分】 東北新幹線・七戸十和田駅
駅構内の売店も店じまいの時間、何もない駅内で１時間を過ごすことになったのだった。
う〜ん、予想はしていたものの「新幹線駅」のイメージとは違って。周辺にコンビニも“無くはない”ので１時間の待ち時間の間に行ってこられるのだが、何だかそんな気持ちにもならず...
あとは...
https://gohachinihachi1978.blog.ss-blog.jp/2023-10-11
直後の記事に書いた通り。結局、「こまち」号との連結作業のある盛岡駅もホーム上の売店は閉店、階下の売店へとダッシュしてパンを買ってくることしかできなかった。何だか、最後は...
最近は地方空港でも売店が人手不足で廃止されるケースが増えているが、それでも...
何だか寂しい帰路だった気がする。
駅弁を広げながら...も、だんだん減っていく鉄道情景なのかもしれない。
でも、また、ゆっくりと、このレールバスたちに会いに行きたいと思うのだった。（おわり）
（※）撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
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もちろん、その中には今でも中小私鉄として続いているところもある。東京近郊なら流鉄もその１つだろう。あるいは、広い意味では小湊鐵道もそんな性格を持っていると考えられる。（安房小湊まで延伸する...というのは、“方便”だったと思われる部分があって。）
でも、そういうローカル私鉄、いま残っている方が僅か。大半は燃料事情が極度に悪化した戦後の混乱期に、そのピークを迎え、昭和30年代ともなると、その開業期の車両・施設の更新時期を迎え金銭的負担が見込まれたことと、道路整備による並行バス路線の発達で、廃止（バス転換）に追い込まれる路線が相次いでいた時期だった。
ちょうど、そんな時期...
1953年（昭和28年）に発足、さっそく敷設工事に取り掛かった南部縦貫鉄道だったが、すぐさま資金が払底し建設は何度も中断する。
しかし、その都度、再開に漕ぎ着けたのは地元の熱意のほか、「東北開発」という全額政府出資の特殊法人のおかげでもあった。沿線の天間林村の砂鉄鉱脈から採掘した砂鉄を貨物列車でむつ市に運んで製鉄に用いる計画。その輸送路として期待されたのが、南部縦貫鉄道だった。
【2023年10月8日14時35分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
当初から旅客輸送は“おまけ”程度に考えられていた節があり...
それが、当時、既に時代遅れの感があった機械式ディーゼルカー、しかもバス部品で製造した定員60名程度の小型車２両だけしか旅客車を用意しなかった部分にも現れていたと考えられるわけで。
リベットの目立つ丸っこい屋根肩のカーブ、当時のバスの部品を流用して作った、鉄道車両としてはかなり簡易な構造のものだった。この補修部品が払底したことも運行休止を決断する理由の１つだったとも言われている。でも、そのレールバス、そして、全国にもここしか残っていない国鉄キハ17系の最後の生き残り...
「貴重な」というだけでは済まないレベルの車両たちは、愛好会の皆さんをはじめとする関係者の努力によって、営業運転終了から四半世紀が過ぎても動態で残されており。僅かな時間ではあったが、この目で見て、そして、ほぼ思い通りの写真を撮ることができて...
資料性のあるものも含めて、駅舎内でグッズ類を購入して、少しばかりでも保存費用にご協力した次第。
18時すぎ、少し遅れて全てのイベントが終了、まもなく駅舎の扉も閉められる時間。タクシー会社に電話して、真っ暗の駅前広場で待っていた＜変態鉄＞だった。
…… ……
2023年10月8日（日）曇り一時晴れ
スタッフによる最後の挨拶。
【2023年10月8日18時32分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
やはり、こうした鉄道の動態保存には、単に撮りに来るだけの趣味者からは想像できないくらいの苦労があるようで。
「グッズ購入で保存費用に協力を...」と。
駅舎内ではきっぷ類や模型など、開業当初からのさまざまなグッズ類が販売され。
【2023年10月8日18時34分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
その傍ら、資料類が壁のところに展示されており。
北東北は冬場の豪雪や強風など、気象条件は厳しい路線だったと思われ。
無線などの情報伝達手段の発達で、最近では見かけなくなった気象告知板が壁面に並べられており。
【2023年10月8日18時38分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
そして、タブレット閉塞。いわゆる“お稲荷さん”である。
80年代の貨物輸送終了による合理化で全線１閉塞化されていたが、80年代までは天間林駅で列車交換が行われていたという。
その当時のものだろうか。
そういう展示資料は増えたものの、駅舎内は基本的に1997年5月の営業運転終了（休止ののち廃止）の時のまま残されているようで。
【2023年10月8日18時38分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
反対側の壁面には、「平成8年3月」とある時刻表が掲出されており。最末期には１日５往復、２両のレールバスのうち１両が七戸〜野辺地間を往復するだけになっており。その最終便にあたる第10列車が17:45発、その発車風景が「夕暮れ撮影会」で再現されたわけで。
【2023年10月8日18時39分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
驚きだったのは、隣の時計。グッズ販売をしていたおばちゃんによれば、営業運転時代から、ずっとこの場所で時を刻んでいるのだそうで。
十和田市方面への延伸が想定されており、七戸の中心街から離れた位置に設置された駅だったので、営業運転時代から、どちらかと言えば、閑散としていることが多かった...というが、地元の時計屋さんから寄贈されたものだろうか、いまも健在なのである。
【2023年10月8日18時39分】 旧 南部縦貫鉄道線・七戸駅
さぁ、まだまだ駅舎内を見ていたかったが、そろそろ閉める時間だということで...
いつの間にか、外は完全に真っ暗で。真っ暗な駅前で待つこと10分あまり、タクシーが到着して。1,500円ほどで七戸十和田駅までは数分の距離だった。
80年代の国鉄合理化で貨物輸送がなくなっても、それでも合理化を重ねながら、南部縦貫鉄道が頑張った、その拠り所の１つが、東北新幹線の青森延伸時に（在来線から離れた）七戸に駅が設置される...ということだったという。その日を待ちながら、とうとう力尽きた...と。
尤も、盛岡以北の延伸は現在のフル規格新幹線になるまで紆余曲折、七戸を通るかどうかも二転三転、その新幹線計画にずっと翻弄されてきた...ということだったみたい。
【2023年10月8日18時57分】 東北新幹線・七戸十和田駅
がらんとした感じの七戸十和田駅。
いや、本当はここでのんびり写真を撮っていないで、全力で改札口に向かえば１本前の「はやぶさ」に乗れたみたいで...
【2023年10月8日19時47分】 東北新幹線・七戸十和田駅
駅構内の売店も店じまいの時間、何もない駅内で１時間を過ごすことになったのだった。
う〜ん、予想はしていたものの「新幹線駅」のイメージとは違って。周辺にコンビニも“無くはない”ので１時間の待ち時間の間に行ってこられるのだが、何だかそんな気持ちにもならず...
あとは...
https://gohachinihachi1978.blog.ss-blog.jp/2023-10-11
直後の記事に書いた通り。結局、「こまち」号との連結作業のある盛岡駅もホーム上の売店は閉店、階下の売店へとダッシュしてパンを買ってくることしかできなかった。何だか、最後は...
最近は地方空港でも売店が人手不足で廃止されるケースが増えているが、それでも...
何だか寂しい帰路だった気がする。
駅弁を広げながら...も、だんだん減っていく鉄道情景なのかもしれない。
でも、また、ゆっくりと、このレールバスたちに会いに行きたいと思うのだった。（おわり）
（※）撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
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